飛沫感染と空気感染の感染経路の違いとは【新型コロナウイルスの正しい情報収集のために】

幼児期に感染症と向き合うために

感染症、この言葉は子育てとは切っても切れないものです。
母胎で過ごした赤ちゃんが、外の世界で出て行くこと=様々な細菌やウイルスと接点をもつことになります。

免疫学関連の本を読み漁っていて、その中でも下記のマンガなどは、かなりわかりやすくウイルスや細菌が体に侵入してくる様子が描かれています。

 

特に、3歳くらいまではあらゆる病気との闘いでした。
保育園という集団生活の中では、家庭内で過ごしていた時よりもやはり感染経路も増えてしまいます。
冬になると流行するインフルエンザや感染性胃腸炎、夏の時期にかかりやすい夏風邪やプール熱など、それぞれの感染経路は異なります。

親としてできることは、
流行している病気の情報を正しく把握し
なるべく、感染しない状況をつくりだすことです。

そのためには、どの病気が、どのように広がっていくのか、その感染経路を封じることです。

感染経路ごとに、その対策も変わります。
今回は感染経路について、自分自身も混乱をしてしまうことを中心に、備忘録を兼ねて、基本知識をまとめます。

飛沫感染

飛沫(ひまつ)dropletとは

広辞苑で調べると、「飛沫とは、飛び散るあわ。しぶき。とばしり。」と記載されています。
唾液などを想像すれば、口から飛び散る、水分性質のものだと想像がつきます。

東北医科薬科大学病院が配布しているハンドブックがあり、この中で、飛沫感染は以下のように説明されています。

※(感染予防のハンドブックがPDFデータとしてダウンロードできます)

飛沫感染とは

感染した人の咳・くしゃみ・つば・鼻水など飛沫(とびちったしぶき)の中に含まれているウイルスを口や鼻から吸い込むことにより感染すること

重要な部分は、「感染した人の」飛沫であることです。
風邪の自覚症状や熱のある場合、または咳などの症状がある感染した人が、この飛沫(感染性分泌物)を飛ばさないように、マスクを着用することが必要です。
かかっていない人の予防としてもマスクは有用ですが、本来のマスクの役割は、感染した人の飛沫を防ぐためのものです。

今回、新型コロナウイルスの記事でもよく見かけますが、感染症には不顕性感染という用語があります。
不顕性感染とは、細菌やウイルスなど病原体の感染を受けたにも関わらず、感染症状を発症していない状態を言います。
感染した人が必ず発症するわけではなく、軽い症状であることもあります。
このあたりの見極めがとても難しいと思います。
子供たちも、鼻水の症状が少しだけあっても、元気で食欲があることはよくあります。

人混みを避けるべきだと言われているのは、不顕性感染の状態の感染者が、知らず知らずのうちに飛沫感染の経路となってしまうリスクがあることです。

飛沫感染でかかる病気として、インフルエンザ、かぜ、百日咳、マイコプラズマなどがあげられます。

空気感染

飛沫核感染とも呼ばれます。

この飛沫核とは、大幸薬品のサイトでは以下のように説明されています。

飛沫核とは、飛沫に含まれる水分が蒸発した直径0.005mm以下の粒子

飛沫(droplet)と飛沫核(droplet nuclei)、言葉は似ていますが異なります。

飛沫は水分を含んでいるため、5μmより大きな粒径で、空気中に長く浮かんでいることはできません。
拡散範囲は約1mと言われています。落下速度は30~80cm/sです。

一方、飛沫の水分が蒸発した飛沫核は、微粒子のため、長い時間空気中を浮遊します。
拡散範囲も空気の流れによって広範囲に飛散することもあり、落下速度は0.06~1.5cm/sと言われています。
そのため、一定時間狭い空間などで同室で過ごすような場合、その飛沫核の小さな粒子を吸い込むことで、空気感染します。
空気感染をする病気は、麻疹(はしか)、水ぼうそう、結核と言われています。

飛沫感染と飛沫核感染(空気感染)、言葉が似ていますが、感染経路としては分類されていて、対策も異なります。

接触感染

ウイルスが付着した手指で鼻や口や目に触れることで、粘膜などを通じてウイルスが体内に入り感染すること

言葉の通り、接触を介して病原体がひろがっていく感染経路です。

汚染されたドアノブに触れたり、汚染されたタオルを共有するなどが例としてあげられます。
ウイルスの付着した手などで、口、鼻、目に触れると粘膜から感染をします。

この感染経路の場合、例えばプールの水を介して感染する「プール熱」(咽頭結膜熱)、結膜炎、ノロウイルスなどがあります。
感染性胃腸炎は、私自身、何度も子どもから感染した経緯があります。
嘔吐物の処理やオムツなどを処理した後に、細心の注意を払っていても、感染力が強く、子供がかかると、次に家族内感染をしていく、そういった病気です。

この感染経路の場合は、接触を避けることが一番です。
汚染されたものを直接触れない、汚染物の正しい処理方法がとても重要です。
隔離するわけにはいきませんので、タオルを共有しない、汚染の可能性があれば消毒をするなどの地道な対策です。

直接汚物を触らないように使い捨て手袋、うがい受け(嘔吐用の容器として利用)、消毒用の次亜塩素酸ナトリウム、大量のマスクは常に自宅にストックをしています。
うがい受けなどは、寝た状態でもすぐに嘔吐できるので、ビニール袋よりも便利でした。

予防は日頃から大切。
感染した後に、どう処理していくかももちろん大切です。
どの病気なのか、初期症状などを細かく記録して、早めに判断していくことも必要です。

病院へ行くべきかどうかの見極めも大切です。
子供が深夜に発熱した場合に救急外来をすぐに受診せずに、電話相談ができます。

日本小児科医会でも紹介されていますが、

短縮番号 #8000 で

対処方法や症状ごとに受診すべき病院のことなど、相談をできます。

不確かなインターネットの情報を検索せず、まず症状を記録して(熱の上がり方、症状などを細かく)、上記のような相談窓口に電話をかけ、適切な方法を聞くことも大切です。

子育て経験が浅い頃は、熱のある辛そうな子供を連れて、すぐに小児科へ行くこともありました。
小児科は、少なからずリスクもあり、何よりも子供自身がきつそうな状況で外へ連れ出すべきか、判断がその都度必要だと思います。

経験から学んだことです。
もちろん、今でも子供の熱や嘔吐の場合は、パニックになりますが・・・

新型コロナウイルスの感染経路は?

新型コロナウイルスの感染経路は、飛沫感染と接触感染であると言われています。
空気感染である可能性は低く、基本的な予防は、感染者との接触を避けることです。
※ただし、医療機関や感染者が多数集まる、換気状態の悪い場合では、空気感染のリスクも高いと言われています。
あくまで、一般的に生活している状態での感染経路として、飛沫感染と接触感染が考えられるということです。

WHOのサイトにも、新型コロナウイルスがどのようにひろがっていくのか、下記のように説明されています。

 How does COVID-19 spread?

People can catch COVID-19 from others who have the virus. The disease can spread from person to person through small droplets from the nose or mouth which are spread when a person with COVID-19 coughs or exhales. These droplets land on objects and surfaces around the person. Other people then catch COVID-19 by touching these objects or surfaces, then touching their eyes, nose or mouth. People can also catch COVID-19 if they breathe in droplets from a person with COVID-19 who coughs out or exhales droplets. This is why it is important to stay more than 1 meter (3 feet) away from a person who is sick.

WHO is assessing ongoing research on the ways COVID-19 is spread and will continue to share updated findings.

飛沫感染や接触感染の可能性が高いことが書かれています。通常のインフルエンザや風邪と同じように、予防の基本は、手洗いうがいです。

Can the virus that causes COVID-19 be transmitted through the air?

Studies to date suggest that the virus that causes COVID-19 is mainly transmitted through contact with respiratory droplets rather than through the air. See previous answer on “How does COVID-19 spread?

日本環境感染学会から、医療機関における新型コロナウイルス感染症の対応ガイドがでています。
一般向けではありませんが、参考になる箇所も多くありましたので、見てみてください。
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_taioguide2.pdf

マスク

マスクの定義として、日本衛生材料工業連合会のサイトに以下のように定義されています。

天然繊維・化学繊維の織編物または不織布を主な本体材料として、口と鼻を覆う形状で、花粉、ホコリなどの粒子が体内に侵入するのを抑制、また、かぜなどの咳やクシャミの飛沫の飛散を抑制することを目的に使用される、薬事法に該当しない衛生用製品

家庭用マスクは、風邪対策、花粉対策、近年ではPM2.5などの対策ができるものなどが市販されています。
主に不織布のマスクやガーゼタイプが一般的です。

マスクの性能を示すものとして、PEE(微粒子濾過効率)、VFE(ウィルス飛沫濾過効率)、BFE(バクテリア濾過効率)が記載されています。

一般財団法人カケンテストセンターで、マスクなどの素材の性能を試験で調べています。
PEEはParticle Filtration Efficiency の略で、試験粒子を捕集(ろ過)できる性能の高さを数値化したものだそうです。こちらのセンターでは、通常は粒径0.1μmの粒子が試験粒子として使われているようです。

VFEはViral Filtration Efficiencyの略で、「ウィルス飛沫濾過効率」と呼ばれ、BFEはBacterial Filtration Efficiencyの略で、「バクテリア濾過効率」と呼ばれます。
この試験では、同一構成の試験装置が使用されていて、BFEは細菌を含む約3μmの粒子がろ過された率を示します。

例えば、インフルエンザウイルス単体のサイズは0.08μm~0.12μm、ウイルスなどの飛沫(水分を含んだウイルス)は2μm~4μm、花粉は3μm~5μmと言われています。

安積濾紙株式会社より引用

マスクの繊維の直径を小さくすればするほど、小さな粒径をもったウイルスなどを完全にブロックできるのでしょうか?
PM2.5の問題の際も、マスクを小さな粒子が通過してしまうのではないか、といった情報が広まりました。
あまりに繊維の直径を小さくしてしまうと、長時間装着するマスクにとっては通気性が悪くなり、不快感が生じてしまいます。
マスクは粒子を通過させないといったメカニズムではなく、捕集する機能に優れているようです。

マスクが花粉やウイルスを捕集する仕組みが、日本エアロゾル学会のサイトで詳しく説明されていました。

繊維層から成るマスクなどのフィルターが、大気中の埃、花粉、ウイルスなどを捕集するには、主に3つのメカニズムが作用しています。

1、慣性衝突
2、さえぎり
3、ブラウン拡散

花粉やウイルスなどの粒子が、空気中に浮遊している場合、マスクなどの繊維に近づいた場合に起こる現象です。
1、慣性衝突→マスク付近で変わる空気の流れによって慣性のために流れに対応できず、マスクなどの対象物に衝突します。
2、さえぎり→空気の流れに沿 った粒子がマスクの表面に接触する現象のことです。
3、ブラウン拡散→粒子はブラウン運動という、不規則な分子運動をしています。このブラウン運動によって、マスクなどの繊維を通り抜ける前に、繊維に引っかかります。
このメカニズムによって、粒子は捕集されていきます。

このメカニズムは、マスクだけでなく、フィルターの捕集技術や排気ガスなどにも使われている技術でした。

マスクの性能ももちろん重要ですが、装着方法がとても重要です。
いくら性能が優れていても、装着の仕方によって、マスクと顔表面に隙間ができてしまい、そこが花粉やウイルスの侵入経路となってしまいます。

ユニチャームの動画などで正しい装着方法が紹介されています。

マスクと特許

マスクに関して、日本の特許明細書を中心に数件読みました。
基本的な構造と役割、このあたりが理解できているので、読みやすいですね。
ただし、特許明細書特有の図面の表記(名称 例えば「上」ではなく「上端」などと表記する)が列挙されているので、構成部材の名称を一度まとめておきました。

 




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