レジの無人化を支えるRFID技術について

バーコードを読み取る端末

数十年前、大学生の時にホームセンターで 商品棚卸 というアルバイトをした経験があります。
店舗の営業時間外である深夜におこなう作業だったため、時給が高めで、かつ数日の短期間のアルバイトということもあり、学生のお小遣い稼ぎとして人気でした。

作業内容は簡単です。

一人一人割り当てられたレーン(商品が陳列された棚)から、陳列された商品を取り出し、棚卸専用の端末で商品のバーコードを読み取ります。
あとはひたすら商品の在庫数をカウントして、端末に数を入力していくだけです。
単純作業でしたが、商品の量は膨大で、数十人のアルバイト学生が時間かけておこなっていた記憶が残っています。

テクノロジーが進化して、AIが単純作業を行うようになっている現在は、商品在庫管理はどのようになっていると思いますか?

ある企業の例を取り上げてみます。

想像を超える技術力を目の当たりにする

最近、UNIQLO(ユニクロ)に買い物に行きましたか?
ユニクロは、カジュアル衣服が幅広い世代に人気ですね。

現在のユニクロでは、レジ精算が無人化しています。(店員さんが対応してくれるレジも残っていますが)
商品の入ったカゴを指定の場所に置くと、商品の個数、金額を一瞬ではじき出します。
自分のカゴに入っている商品の詳細が、タブレット上の確認画面に表示されます。

この無人レジを可能にしているのは、RFIDという技術です。

ここと
RFIDって何??
RFID(Radio Frequency IDentification System)

RFIDとは、ID情報を埋め込んだタグから、電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数cm~数m)の無線通信によって情報をやりとりするもの、および技術全般を指す。 ウィキペディアより

人手不足解消、作業効率化の観点から、アパレル業界を中心に導入されている技術がRFIDです。

具体的に見てみます。

最近のユニクロの商品タグには、【ICタグ】のマークが記載されています。

この商品タグのシールをめくると、さらに銀色の図面のようなものが描かれた透明のシールが貼られています。
銀色の部分を触ってみましたが、凹凸はありませんでした。

これは、RFタグと呼ばれるもので、裏面がシールになっているラベル状のICタグになります。
確認してみると、今回購入したすべての商品タグ1枚1枚の下に、ラベル状のICタグが付いていました。

RFタグの内部には、識別に必要なID(商品の番号のようなもの)などの情報が書き込まれています。IDなどの情報は、電波によって外部へ伝えられます。

ICタグ(インレイ、小型タグ)をリーダで読み取っている様子

引用 https://solution.murata.com/ja-jp/service/rfid-solution/basic/

RFIDの技術では、このように電波を用いて、RFタグのデータを非接触で読み書きができます。

ユニクロでかごに入った商品を非接触(触らない状態)で、商品情報が読み取れたのは、RFIDの仕組みによるものです。

RFIDのできることは以下の通りです。

1、必要な情報を非接触で読み出すことができます。

2、RFタグから外部にデータを出す場合、電波を用いてデータを取り出すので、バーコードのように、表面状態に影響をされません。
※表面に汚れがあったり、他のものRFタグの上にのっていても影響を受けません。

3、複数の一括読み取りができます。
※私がアルバイトで経験したような、商品ごとに端末で1個1個読み込む必要はありません

4、RFタグには新たに情報を書き加えたり、修正したりすることもできます。

参考にしたサイト:https://imagers.co.jp/about_rfid

 

RFIDによる完全自動化倉庫

RFID技術を生かして、ユニクロでは生産から梱包、在庫管理、売り上げ管理などを一元管理しているそうです。
ユニクロの有明倉庫とよばれる完全自動化倉庫の動画です。

 

ファーストリテイリングのサイトから引用

有明倉庫はユニクロのEコマース専用の自動化倉庫として、2018年秋からフル稼動しています。ファーストリテイリンググループの物流改革の幕開けです。すべての商品にICタグ(RFID)を導入しているため、有明倉庫での商品の搬入、仕分け、ピッキング、検品などの作業プロセスはほぼ無人で行うことができます。24時間稼動のため、繁忙期の人手不足による配送遅延という問題も解決されました。

RFIDに関する特許明細書

RFIDに関する特許は4万8千件以上ヒットしました。
ユニクロのようなアパレル業界で使われているRFIDは、UHF帯(極超短波)と呼ばれる周波数をもっています。

周波数については、また後日記事にまとめたいと思いますが、簡単に言うと、周波数は光や音、電波などが一秒間に何回振動するかをあらわしたものです。

下記の図のようにUHF帯は、情報伝送容量が比較的多くなっています。

引用 総務省

 

下記の特許は日立製作所のものです。

RFID技術を用いて、段ボールの梱包された状態でもRFタグで管理が可能です。
ただし、温度管理が難しい商品が段ボールに梱包されていると、段ボール開封時に商品が劣化している可能があります。

 

【公開番号】特開2019-82345(P2019-82345A)
【公開日】令和1年5月30日(2019.5.30)
【発明の名称】RFIDタグ及びそれを用いた物品管理システム
【出願人】
【氏名又は名称】株式会社日立製作所

【0003】
一方、商品の流通・管理には、Radio Frequency Identifier(RFID)も用いられている。RFIDはRFIDタグ、リーダー/ライタとから構成される。RFIDタグは、至近距離での通信により、輸送中の商品管理や保管を行うためのタグである。それぞれの商品に貼付したRFIDタグを電波や磁場等の信号で読み取るので、ダンボール等に梱包された場合であっても1個ずつ商品を取り出し、コードを読み取る必要がないという利点がある。

この特許は、RFタグの配線(4)の間に、ある温度以上になると溶解する導電性の物質(8)を含み、温度の変化をRFIDで感知するというものです。
上の図の(a)は温度変化のない状態、(b)は温度が一定以上になり、配線の間にあった物質(8)が溶けてしまっています。一度溶解した物質は、多孔質素材に吸収させることで、再度固まることのない状態にします。この変化を使って、梱包された段ボールの中での温度変化を感知しているそうです。

配線接合部の構成を図3を用いて説明する。図3は実施形態1に係るRFIDタグの温度検知方法を示す図である。図3(a)は温度逸脱前(所定温度未満)のRFIDタグの配線接合部の模式図であり、(b)は温度逸脱後(所定温度以上)のRFIDタグの配線接合部の模式図である。配線接合部11は、導電性材料8と、多孔質部材9と、を備える。導電性材料9は所定温度以上で溶融する物質を含む。多孔質部材は、配線との間に空隙又は絶縁性部材を備え、配線と導通しないように配置されている。配線接合部は、所定温度未満では、温度逸脱前の状態であり、配線間に配置された導電性材料により、配線間が導通されている。所定温度以上となると、導電性材料が溶融し、溶融した導電性材料が多孔質部材に吸収される。その結果、配線間の導通が不可逆的に遮断され、温度逸脱を検知することができる。温度逸脱後に所定温度未満に温度を戻しても、導電性材料は多孔質部材に吸収されたままであるため、導通は遮断された状態のままである。なお、多孔質部材は、溶融した導電性材料を吸収できればその配置は限定されない。

 

身につけられるテクノロジー

RFIDについて検索していると、スタンフォード大学により開発された「Bodynet」という装置に、RFID技術が活用されていました。

スタンフォード大学のサイトより引用

Stanford engineers have developed experimental stickers that pick up physiological signals emanating from the skin, then wirelessly beam these health readings to a receiver clipped onto clothing. It’s all part of a system called BodyNet.

The rubber sticker attached to the wrist can bend and stretch as the person’s skin moves, beaming pulse readings to a receiver clipped to the person’s clothing.

The BodyNet sticker is similar to the ID card: It has an antenna that harvests a bit of the incoming RFID energy from a receiver on the clothing to power its sensors. It then takes readings from the skin and beams them back to the nearby receiver.

このBodynetは、バンドエイドのように人間の肌に貼り付けることができるシールタイプのものです。
写真のように、BodyNetは伸縮性があります。
Bodynetは、皮膚が伸びたり縮んだり動きを測定し、センサーによって生体情報を読み取りするものです。読み取った情報は、衣服に取り付けたRFIDリーダーに無線でデータが送られます。

Using metallic ink, researchers screen-print an antenna and sensor onto a stretchable sticker designed to adhere to skin, tracking pulse and other health indicators, and beaming these readings to a receiver on a person’s clothing.

出典 スタンフォード大学

将来的には、脈拍や心拍数、体温などの読み取ったデータを、RFID技術でスマホやデバイス端末に瞬時に送り、睡眠障害や心疾患等をもつ人たちのモニターとして活用を目指すそうです。

このBodynetの記事の中で、wearable technology という言葉が使われていました。

軽量化がテクノロジーの分野で進んでいくと、スマホやタブレットのようなデバイス(ハードウェア)はなくなり、「肌に身に着けるもの」からさらに「体に埋め込むもの」になったりするのかな、とこのBodynetの記事を読みながら想像しました。

軽量化を支えるものとして、接着やシールなどの分野も注目すべきだと感じました。




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