インフルエンザが流行する前に

インフルエンザ流行にそなえる

消費増税を迎える10月。
私のカレンダーには、もう一つ重要な予定が記されています。

インフルエンザ予防接種の予約です。

毎年10月~11月に予防接種を家族全員で受けています。
家族内で一人でも感染すると、ヒヤヒヤした日々を過ごすことになりますので。

こどものかかりつけ小児科で、予防接種の予約をすると、ここ数年、必ずこう言われます。

「ワクチンの入荷予定がだいたい●●日です。どのくらいのワクチンが確保できるかわからないので、10月になったら早めに予約してください」

毎年流行る感染症なのに、同じ予防接種ではいけないのか?
そもそもインフルエンザって何者??

備忘録として、調べたことをまとめます。

ワクチン製造スケジュール?

厚生労働省のサイトに、2019年度のワクチン原液製造に関するおおまかな流れが書かれていました。
流行シーズンから逆算して、ワクチン製造のスケジュールがスタートするようです。

1、WHO(世界保健機構)によって、インフルエンザ流行期に推奨されるウイルス型が発表されます。
この時期がだいたい2月~3月です。

インフルエンザワクチンは鶏の卵を使って製造されます。
インフルエンザ製造の約半年前から、ひな鳥を十分な管理下で成鶏になるまで育てます。
このニワトリの卵を10~12日間ふ卵させ、一定の品質を満たす卵がワクチン製造用として使用されます。

2、ワクチン製造用の卵に、ワクチン株を接種します。33℃~35℃の温度下で2日間培養します。培養後、半日ほど冷却したのち、ウイルスが増殖した感染尿膜腔液を採取します。その後、精製、不活性化したのち、規定の濃度に調整したワクチン原液が出来上がります。

3、ワクチン原液はバイアル瓶と呼ばれる容器や注射筒に充填され(詰められ)、国家検定を経て、10月頃に出荷されます。

バイアル瓶

その年に流行りそうなインフルエンザウイルスを予測することから始まり、その予測したワクチンを一からつくり、検査などを繰り替えしたのちに量産するので、こんなに時間がかかるんですね。

国立感染症研究所によると、2019-20年の選定されたインフルエンザワクチン株は以下の通りです。

A/Brisbane(ブリスベン)/02/2018(IVR-190)(H1N1)pdm09
A/Kansas(カンザス)/14/2017(X-327)(H3N2)
B/Phuket(プーケット)/3073/2013(山形系統)
B/Maryland(メリーランド)/15/2016(NYMC BX-69A)(ビクトリア系統)

2018-19年に流行したインフルエンザの方はA型が大半を占めていたようです。

厚生労働省の発表では、今冬の製造予定量は約2.951万本(7/31時点)。
平成28年度以降最も多い供給量なので不足は生じない状況が推定される と書かれていました。

ひとまず、ワクチンがなくなる!なんてことはなさそうです。(早めが良いと思いますが)

インフルエンザとは

インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気です。
風邪と似た症状もありますが、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛などの症状が急激に現れます。

インフルエンザウイルスは、A・B・C型の3型があります。

インフルエンザウイルスの表面は、赤血球凝集素(HA)ノイラミニダーゼ(NA)という糖蛋白が外に突き出た状態になっています。
エンベロープという膜でウイルスの遺伝情報をもったゲノムが覆われています。
インフルエンザウイルスのゲノムは8本に分節化されています。

赤血球凝集素(HA)は、正常な細胞にくっつく最初の役割を担っています。
HAは、正常な細胞のシアル酸という糖鎖に結合して感染する役割を果たし、正常な細胞を宿主細胞(感染を受けた細胞)にさせます。

 

Wikipediaより

 

細胞にはエンドサイトーシスという膜動輸送の働きがあります。
細胞が細胞外から細胞内へ物質を取り込む作用です。
この作用は受動的におこなわれてしまうので、いったんHAをつかって細胞に吸着をしてしまえば、エンドサイトーシスの受動的な働きによりウイルスは細胞内に侵入することができます。

細胞内に侵入したウイルスは遺伝子(RNA)を放出して、増殖します。
新たに増殖したウイルスは、HAが細胞と結合したままでは外に飛び出せません。
そこでノイラミニダーゼ(NA)が、結合につかったシアル酸とのつながりを切り離す役割があります。

細胞の外に飛び出した新たなウイルスは、周辺の細胞へと次々に感染を広げていきます。

インフルエンザに感染すると、1日から3日の潜伏期間を経て発病すると言われています。
この潜伏期間中に、細胞が次々に感染しているのですね。

毎年流行する型が変わる

インフルエンザウイルスには、上の記事でも書きましたが、3種類の型があります。

A型のインフルエンザウイルスは、16種類の赤血球凝集素(HA)と9種類のノイラミニダーゼ(NA)の組み合わせによって、頻繁に変異を繰り返すウイルスです。
抗原連続変異と抗原不連続変異と呼ばれるウイルスの構造変化があります。
抗原連続変異は同じ型のウイルスが毎年少しずつ変化をするマイナーチェンジのようなもので、抗原不連続変異は突然全く別の型にウイルスが変わってしまいます。

ワクチンを製造するには、流行しそうな型を分析して決定していくことになります。

インフルエンザの感染経路は、接触感染、糞口感染、血液感染、飛沫感染、空気感染と言われます。
流行し始める前に予防していくことが重要です。

マスクを着用
予防接種を受ける
人混みを避ける
手洗いうがいの徹底

こんな方法で、なるべく罹患しないように気を付けるしかありませんね。

マスク、消毒液など流行前にストックしておくべきですね。

最新情報を入手していくことも必要です。
下記のように、インターネットを介して、常に最新情報を入手することができます。

WHOのインフルエンザ最新情報
https://www.who.int/influenza/surveillance_monitoring/updates/en/

厚生労働省のサイトでも、週ごとにインフルエンザの発生状況がPDFで発表されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html

学んだ用語で特許を検索

【公開番号】特開2019-163292(P2019-163292A)
【公開日】令和1年9月26日(2019.9.26)
【発明の名称】ノイラミニダーゼ阻害剤、これを含有した抗インフルエンザ剤、食品および薬剤、並びにそれらの製造方法

【出願人】
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学

【0003】
さらに、特許文献2には、レイシ属等から得られる五量体プロシアニジンフラボノイド等を有効成分とする抗ウイルス製剤が開示されている。
毎年世界中で成人の5~10%、子供の20~30%が季節性のインフルエンザに感染すると言われている。A型のインフルエンザウイルスは、ヘマグルチニン(HA)ノイラミニダーゼ(NA)の2つのコートタンパク質を有し、このうちHAは、ヒトの気道等の細胞表面に存在するシアル酸に結合する。この結合により、インフルエンザウイルスが細胞膜に囲われて細胞内に取り込まれ、細胞内にインフルエンザウイルスを内包した小胞(エンドソーム)が形成される。インフルエンザウイルスを内包した小胞内側のpHが低下すると、小胞内のインフルエンザウイルスのコートタンパク質部分が小胞の内壁と融合し、インフルエンザウイルスのゲノム部分が細胞内に放出される。その後、該ゲノムに基づいて細胞が有する複製機能が働いて該細胞内でインフルエンザウイルスが大量に生産される。次に、大量生産されたインフルエンザウイルスが該細胞から放出されるが、この際に、該インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)部分が該インフルエンザウイルスのHA部分と該細胞の糖タンパク質のシアル酸類との結合を切断する。この切断により前記インフルエンザウイルスが前記細胞から放出されることから、インフルエンザウイルス表面のノイラミニダーゼ(NA)は、ヒトの気道等の細胞からインフルエンザウイルスが放出されるのに必須の酵素である。そのため、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)部分は抗インフルエンザ剤の特別な標的分子とされている。

【0004】
一般に抗インフルエンザ剤として知られている「リレンザ」(登録商標)や「タミフル」(登録商標)は、ノイラミニダーゼ(NA)の活性を阻害することによりインフルエンザウイルスがヒトの気道等の(宿主)細胞から放出されるのを阻止することにより、他の細胞や、他のヒトに移りさらに拡散・増殖することを抑える。

インフルエンザに罹患した際に処方される薬は、「タミフル」や「リレンザ」があります。
数年前にインフルエンザに罹ったときには、タミフルを服用しました。
とてもきつかったのに、服用後には急速に回復した記憶があります。

この特許では、ノイラミニダーゼ(NA)の活性化を防ぐ役割としてタミフルやリレンザの抗インフルエンザ剤を服用すると書かれています。
感染したインフルエンザウイルスが増えてしまってからでは、効果が薄れてしまいます。
なるべく早い段階で感染したウイルスが増殖する橋渡しをしているNAを阻止することが重症化を防ぐためには必要ですね。

今回は関連する箇所のみしか読みませんでしたが、ひとつひとう言葉を調べて、企業のサイトや関連する情報を取得してから特許に目を通すと、分からない言葉だけが透けて見える感覚がありました。

何より、自分たちの体内で起こっていることを紐解いていくのは、とても興味深いです。

 

(参照したサイト)
生化学工業 https://www.seikagaku.co.jp/ja/glycoscience/10theme/theme09.html
国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html
厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000535792.pdf
仲外製薬 https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/genome/genomep09.html
ベクトンディッキンソンアンドカンパニー https://www.bdj.co.jp/safety/articles/ignazzo/hkdqj2000007dkl4.html

 

8月5-11日学習ログ 検査の前に知っておきたい!胃透視検査の流れと中身[体験談]

2019年8月12日




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