消せるペンでお絵描きと写経を楽しむ

鉛筆よりボールペン

わが家の子供たちが好きな遊びのひとつがお絵かきです。
文字を書いたり、動物を真似て描いたりと、何かを「描く」ことが大好きです。

こども作

なぜだか、鉛筆よりボールペンを好んで使います。

親としては、ボールペンは消せなくなってしまうので、本当は鉛筆を使ってほしいのですが…
筆圧が強くない子供たちにとっては、きっとボールペンの書き心地が良いのでしょうか。

そこで、通常のボールペンではなく、フリクションボールという、消せるボールペンを使っています。

書いた文字を比べても、ボールペンとほとんど違いが分からないぐらい。

上がPILOTのフリクションボールを使って書いた文字です。
下が通常のボールペンです。

ペンの先端についているラバーを使えば、簡単に消すことができます

以前から消せるボールペンはありましたが、最近のボールペンは書き心地も、消した跡も随分と進化したように感じます。
消しゴムのカスもでないので、便利ですね。

このボールペンの仕組みはどうなっているのか、気になってPILOT社のサイトで調べてみました。

消える秘密は、インクにあります。
このフリクションボールに使われているインクは、専用のラバーで擦ることで、摩擦熱が生じ、60度以上になると無色になるという特殊なインクです。

フリクションインキと呼ばれる特殊なインクの粒子を見ていくと、1、発色剤 2、発色させる成分 3、変色温度調整剤の3種類の成分がマイクロカプセルに内包されています。
60度以上の摩擦熱が生じることで、マイクロカプセルに内包された3種類の熱変色性組成物が、着色状態から消色状態に変化するのです。

PILOT社のサイトより

一度消した場所にも繰り返し書くことができます。
特許も検索しましたが、かなりの数の特許がありました。

その中で、熱変色性色材のフリクションインキを写経に活用している特許があったので、今回はその特許を取り上げてみます。

書いて消せる写経セット

【公開番号】特開2012-200967(P2012-200967A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【発明の名称】写経セット
【出願人】
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社

【0006】
[1]本願の第1の発明の写経セット1は、写経用紙2と、該写経用紙2上に加熱により消色する筆跡23を形成可能な熱変色性筆記具3とからなることを要件とする。

【0008】
[2]本願の第2の発明の写経セット1は、前記第1の写経セット1において、前記写経用紙2に手本となる経文21が非熱変色性色材により印刷され、前記経文21が前記熱変色性筆記具3による筆跡23よりも薄く印刷されることを要件とする。

【0016】
・熱変色性筆記具
本発明において、前記熱変色性筆記具3は、加熱により消色する可逆熱変色性色材を備える。前記可逆熱変色性色材により、写経用紙の上に熱変色性の筆跡23を形成できる。前記熱変色性筆記具3は、筆記により前記可逆熱変色性色材を写経用紙上に形成するためのペン先31を備える。前記可逆熱変色性色材は、液状、ゲル状、固形状のいずれであってもよい。前記可逆熱変色性色材が、液状またはゲル状(即ちインキ)である場合、熱変色性筆記具3は、内部に前記可逆熱変色性色材が収容され且つ該可逆熱変色性色材が吐出可能なペン先31を備える。前記可逆熱変色性色材が、固形状の場合、熱変色性筆記具3は筆記により摩耗する固形芯からなるペン先を備える。
【0017】
前記可逆熱変色性色材が、液状またはゲル状である場合、前記ペン先31は、毛筆体が好ましいが、これ以外にも、繊維加工体、多孔質体、合成樹脂の押し出し成形体、ボールペンチップ、万年筆の先端にスリットを有する金属板製ペン先等が挙げられる。前記可逆熱変色性色材が、液状またはゲル状である場合、前記可逆熱変色性色材は、熱変色性筆記具3の軸筒内に、直接または、インキ吸蔵体に含浸させて収容される。
【0018】
・可逆熱変色性色材
本発明において、前記可逆熱変色性色材は、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。

写経は、「仏教の御経を書き写す」もので、書かれている経文を書写することで、書くことに集中するため心の安定をはかることができると言われています。

この特許では、消せる技術を使うことで、何度でも使える写経セットが可能になり、使用者にとって経済的に寄与しているものだと述べられています。

仕組みは、フリクションボールと同じです。

手本となる経文(21)が、非熱変色インキであらかじめ薄く印刷されています。
非熱性なので、摩擦熱のような温度変化を受けないインクですね。

その経文を(3)の熱変色性筆記用具を使ってなぞっていきます。
(3)には、液状、ゲル状などの熱変色性色材がマイクロカプセルに内包された状態で収容されています。
筆記することで、その色材が押し出されます。この押し出された時の状態は、完全発色温度(t1)の温度です。特許の中では、温度はマイナス30度からプラス20度の範囲で発色するものだと書かれています。

【0035】
・加熱消去具
前記写経用紙2に形成された筆跡23は、加熱消去具により消去することできる。前記加熱消去具は、筆跡23を摩擦することにより摩擦熱を発生させる摩擦具、アイロン等の加熱部を筆跡23に押し当てて使用する接触型加熱具、ドライヤー等の温風を筆跡23に吹き付けて使用する非接触型加熱具が挙げられる。本実施の形態の熱変色性筆記具3は、本体の一端部またはキャップの一端部に弾性材料からなる摩擦部32を備える。
【0036】
前記写経用紙2上の可逆熱変色性色材による筆跡23を前記摩擦部32により摩擦すると、その際に生じる摩擦熱で前記筆跡23を容易に消去することができる。また、前記接触型加熱具または前記非接触型加熱具で、前記写経用紙2上の可逆熱変色性色材による筆跡23の大面積を迅速に消去することができる。

(32)の摩擦部を使って筆跡(23)に押し当てて摩擦熱を加え、その温度が35度から90度の完全消色温度(t4)の状態になると、色材が消色状態に変化して、筆跡が消えます。
このように1枚の写経用紙を繰り返し使って写経ができるものです。

技術開発は日々進化していく

フリクションボールの特許を調べていくと、PILOTと三菱鉛筆の特許訴訟の記事が多くヒットしました。三菱鉛筆の商品はユニボールというもので、熱で色が変化するインキを技術に用いたものです。
このユニボールがフリクションボールペンの特許を侵害しているとして、製造販売を求める訴訟を起こしていました。

現在は和解しているようですが。
もう少し進んだ勉強では、この特許侵害などの事案を読み解いていく必要がありますね。
相違点は何なのか、何が問題なのか。そのためには法律の知識が必要なってきます。

やることは盛りだくさんですが、身近なものから学んでいくと、かなり興味をもって取り組めそうです。




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