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プラネタリー・バウンダリー
スウェーデン出身の環境学者ヨハン・ロックストームらが2009年に提唱した プラネタリーバウンダリー。
人間は産業発展や経済発展を通して、急速な成長を遂げている一方で、人間が生存し続けるための基盤となる地球は限界(容量)に近づいているのではないかと言われています。
プラネタリーバウンダリーは、人間が生存できる活動領域とその限界(バウンダリー)を把握することで、人間にとっての壊滅的変化を回避できるのではないかということを伝えた有名な用語です。
In 2009, former centre director Johan Rockström led a group of 28 internationally renowned scientists to identify the nine processes that regulate the stability and resilience of the Earth system. The scientists proposed quantitative planetary boundaries within which humanity can continue to develop and thrive for generations to come. Crossing these boundaries increases the risk of generating large-scale abrupt or irreversible environmental changes. —stockholm resilence centreより引用
プラネタリーバウンダリーには、9つのプロセスにおいて、一定の限界値を超えて活動してしまうと、急激な環境変化の危険があるとしています。
上の英文では、環境変化に irreversible という単語を使っています。
「不可逆的=後戻りできない」環境変化を引き起こすいうことです。
経済活動や産業の発展を推し進めるなかで、地球の限界を超えない成長を提唱しています。
特許翻訳を志しはじめて、まだまだ数は足りませんが、特許明細書に触れる機会が増えました。
発明や技術の進歩を伝える明細書の文面にも、その発明や開発の根拠として、環境課題を解決するため、既資源の代用としての新たな資源を生み出すためといった「発明、技術の目的」が書かれているものをよく目にします。
人類の発展や成長と隣り合わせにある、環境問題や資源問題。
特許の背景にもプラネタリーバウンダリーが強く関わっていると感じています。
備蓄品の在り方
プラネタリーバウンダリーのひとつ、climate change に関しては、大気中の二酸化炭素は390ppmを超えており、プラネタリーバウンダリー(地球の限界)を超えつつあることが研究で伝えられています。
Climate Change
Recent evidence suggests that the Earth, now passing 390 ppmv CO2 in the atmosphere, has already transgressed the planetary boundary and is approaching several Earth system thresholds. We have reached a point at which the loss of summer polar sea-ice is almost certainly irreversible. This is one example of a well-defined threshold above which rapid physical feedback mechanisms can drive the Earth system into a much warmer state with sea levels metres higher than present. The weakening or reversal of terrestrial carbon sinks, for example through the on-going destruction of the world’s rainforests, is another potential tipping point, where climate-carbon cycle feedbacks accelerate Earth’s warming and intensify the climate impacts. A major question is how long we can remain over this boundary before large, irreversible changes become unavoidable.
最近の異常気象を思い出しても、数十年前より気温が上昇し、台風の位置が少しずつ変化しているように感じます。
先日の台風19号も、関東地方に大きな被害をもたらしました。
異常気象による大雨や気温上昇、地震や豪雪など、いつ自分たちが被害にあうかわからない状況なので、防災への意識がより高く求められるようになってきています。
各家庭でも防災グッズを備蓄したりと対策をされている人も多いと思います。
一方で、防災グッズ(備蓄品)に関する課題点がいくつか指摘されています。
今回は備蓄品に焦点をあてて、何が問題なのか、私なりにどう解決しているかを書いてみたいと思います。
備蓄品の問題点
「備える」ために、各家庭で防災グッズ(備蓄品)を準備しておきましょう、と言われています。
いざという時の備えになるはずですが、実際は問題点や難しさもあります。
家庭内での備蓄品に関しての問題点を例にあげてみます。
管理場所は?
推奨されている最低限の備蓄量は、3日分×家族分 と言われます。
これだけの量を管理するには、広いスペースが必要です。
避難経路を考えると、玄関や取り出しやすい場所が選択肢のひとつとなりますので、備蓄品用の場所は限られてしまうのが現状です。
賞味期限・経年劣化
いざという時に、賞味期限で食べられなかったり、電池などの消耗品は経年劣化してしまうことがあります。
こまめに期限を確認したり、交換することが必要です。
備蓄することで満足してしまい、その後の備蓄品をしまい込んだまま、管理ができていない状況が問題です。
わが家の備蓄品
備蓄品に関する問題点は、そのままわが家にも当てはまりました。
実際、使い捨てホッカイロは消費期限を過ぎていましたし、食品はいつのまにか賞味期限切れになっていた経験があります。
そこで、私は備蓄品を3つに分類して管理することにしました。
- 非常用リュックに入れておくもの
- 日常的生活で使うもの
- 食料・飲料
それぞれ管理方法を少しだけ変えています。
1、非常用リュック
非常用リュックには、基本的に劣化しにくいもの、非常時しか使わないものを入れています。
アルミブランケット(防風・防寒用・防水のアルミ製シート)
懐中電灯
笛
寝袋
三角巾
レインコート
歯ブラシ
マスク
ウェットティッシュ
簡易トイレシート
軍手
コットン
手回し充電ラジオ、充電器
薬セット(絆創膏、綿棒、コットン)
メモ帳&ペンセット
エマージェンシーシート
ハンドタオル
ゴミ袋
これらを1つのリュックに詰めて、すぐに持ち出せるように玄関の収納にしまっています。
2、日常生活でつかうもの
日常で毎日使っているものです。
コンタクトレンズ、眼鏡、化粧品、タオル、消毒液、電池等はこの分類になります。
洗面台の下の棚に、補充用をまとめて1つの収納箱に入れてストックしておくことにしました。
置き場所は洗面台に統一しています。
日常生活で使い慣れているものですし、消費期限切れといったことはなくなります。
3、食料品・飲料品
食料に関しては、ローリングストック という考えが推奨されています。
普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくという考えです。
図 首都圏防災ネット
日頃から食べ慣れたものをストックする方法は、無理のなくでき、有効だと思います。
わが家は、乾麺や缶詰、インスタントスープなどを多めに購入しておいて、1つの収納箱に入れておきます。
収納箱の在庫が少なくなってきたら、補充しています。
「備蓄している」という感覚はありませんし、日々確認しているので、わざわざ賞味期限切れを管理する必要はありません。
少なくなる→補充 のサイクル です。
備蓄用のペットボトル水もストックしていますが、水は容量がもっと必要と感じました。
わが家では、ウォーターサーバーを毎月購入しているので、そのストック分(3.4L×2)を備蓄品としています。
キッチンペーパー、除菌スプレーなどもストック用の食料と一緒に予備を保管しています。
こちらも 少なくなる→補充 のサイクルです。
機能的で、デザイン性にすぐれたグッズ
日常生活で、防災対策になるものを利用していくことも大切だと感じています。
備えることは重要ですが、使い慣れていることが必要です。
防災専用 としてしまうのはもったいないし、いざという時に機能しないリスクもあります。
わが家にある、日常使いのもので、防災用も兼ねているものが数点あります。
使ってよかったもの、機能性の高いものを一部ご紹介します。
【COLEMAN (コールマン) キャンプ用品 バッテリー電池式 ランタン】
日常使いはもちろん、キャンプなどのアウトドアにも活用しています。 ポータブルタイプです。
このランタン、4つの発光パネルが取り外せます。 USBポート付きでモバイル機器の充電も可能です。
【マット THERMAREST(サーマレスト)】
避難所の多くは、体育館など大きな施設を使われることが多いと思います。
毛布などは準備されていても、敷布団などではないので、寝ていても腰が痛くなりそうです。
こちらのマットは、アウトドアでも使うことができます。
意外に運動会やお花見に使えますよ。
クッション性があるので、場所取りしたシートの上に置くと、熱も伝わりにくく、座り心地もよいです。
寝袋の素材にも利用されているので、防寒にもなるマットです。
【IWATANI ガスコンロ】
こちらのコンロは、持ち運びしやすいように、取っ手がついています。
取り外し可能なトップカバーは、野外では風よけにもなります。
【無印良品】
日常的に無印良品を利用しています。
食べ物だけではなく、スキンケアやレトルト食品などはこちらでストックしておいて、使ったら補充するようにしています。
「無印週間」で安くなるタイミングで管理すると決めてしまえば、購入も割引でできますし、ストック品の賞味期限や消費期限切れも防げます。
無印良品のサイトには、防災用の特設サイトをあります。
日常生活でも愛用しているものがたくさんなので、防災のため!という意識はなくなります。
【位置情報を確認】
子どもと離れた状況の場合、まずどこにいるのか、安全な場所なのかが一番気になると思います。
通学用にGPS Botを活用しているので、いざという時に活用したいです。
経験していないことは対応できない
装備は完璧でも、いざという時に対応できるかが問題ですよね。
ある日突然、家電に囲まれた自宅から、避難所生活または車中生活を送ると考えた時に、その時に必要な力は?
サバイバル力です。
キャンプと防災をクロスした考えを推奨しているサイトもいくつかあります。
機能的で、耐久性のあるキャンプや山岳用品、山や海などの野外での知恵は、そのまま緊急時の何もない状況で十分生かせるものです。
私自身も、家電を使わなくてもできる生活を意識して、日頃から取り組んでいることがいくつかあります。
(防災を意識してというよりは、昔ながらの知恵に敬意を表して実行している側面が強いですが)
例えば、
1、炊飯器→鍋炊き
炊飯器は自宅にありません。
鍋で炊くご飯は、意外に簡単で、時間もお米を洗ってから30分程度でできます。
2、レンジ→蒸す
鍋と蒸篭があれば、ご飯を温めたり、野菜やお肉の調理は簡単にできます。
冬場は、蒸気による加湿効果もありますよ。
大きな災害は経験していませんが、停電で電気が使えなくなったことが何度かあります。
当時はオール電化住宅に住んでおり、トイレもお風呂もIH調理もすべてできない状況になりました。
ご飯も炊けない、加工品を温める手段もない…
家電は時間短縮を生み出す、すばらしいものです。
家電の良さを感じつつ、頼り過ぎないことも必要です。
なくても済む方法を知識として知っておくこと。
状況に応じて、臨機応変に対応ができること。
基本的な生活に関わる部分は、昔ながらのアナログな方法が、実はいちばん簡単で、手間がかからないと感じています。
鍋や蒸篭は使え込めば手に馴染んできますし、メンテナンスもとても簡単です。
備蓄品と特許
災害にそなえるための備蓄品は、ある程度の保存性や耐久性が求められます。
特に食材に関しては、冷蔵設備等がない状態で保存ができ、加熱なしですぐに食すことができるものが望まれています。
防災食、非常食といえば乾パンを想像する方も多いと思います。
保存性に優れていますが、歯の弱い幼児や高齢者にとっては、食べにくい印象があります。
短時間の避難ではなく、避難生活が長期に及ぶ場合には、やはり主食が恋しくなりますよね。
数ある防災食のなかで、主食であるパンを缶詰にした、缶詰食パン を見つけました。
保存期間6年の缶詰パンがあり、その製法が気になりましたので、特許を調べてみました。
【発明の名称】缶詰とその製造方法
【出願番号】特願平8-185170
【出願日】平成8年(1996)7月15日
【氏名又は名称】有限会社秋元ベーカリー
【発明者】 【氏名】秋 元 義 彦【発明が解決しようとする課題】
本発明は、調理が不要でそのまま食せる生パン類を、焼き立ての風味や柔軟さ、しっとり感などを失わせずに常温下で長期保存できるようにすることを目的としてなされたもので、焼き立てのパンの美味しさが缶内で長期間保たれ、パンの大敵であるカビの発生も確実に阻止され、且つ缶内のパンを容易に取り出すことができるパンの缶詰を提供することを技術的課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】 この課題を解決するために、本発明による缶詰は、缶口を開放した空缶の状態で、缶胴と缶底の内面を覆う耐火性の薄葉紙が敷かれた缶内にパン生地を入れ、そのパン生地を缶内で発酵および焼成させて焼き上げたパンが、缶口を缶蓋で閉鎖して密封された缶内に、前記薄葉紙に包まれた状態で収容されていることを特徴とする。
缶詰パンができるまでは、「パン・アキモト」さんのサイトで説明がされています。
しっとり感を損なわず、保存性を実現するために、缶詰に直接パンを入れるのではなく、筒状にした耐火性の紙を入れています。
グラシン紙は身近に使われているものだと、駄菓子屋さんで見かける紙風船や焼き菓子の型紙などです。
表面がツルツルした半透明の紙のことです。
【0014】次に、原料の秤量・詰込み工程Bは、捏ね上げた後に一定時間ねかせてガス抜きしたパン生地を、缶詰用の缶1の容積に応じた適量の大きさに分割して、缶口が開放された空缶の状態の缶1内に詰め込む工程であって、パン生地を詰め込む缶1の缶胴2と缶底3の内面には耐火性の薄葉紙4を敷き、薄葉紙4を敷いた缶1内に詰め込まれたパン生地5は、その状態のまま所定の温度および湿度に調整された発酵室に入れて熟成・発酵させる。 【0015】なお、薄葉紙4は、それのみを予め缶1内に敷いておき、その後でパン生地5を缶1内に入れる場合に限らず、適量に分割されたパン生地5を包み込んだ状態でそのパン生地5と共に缶1内に入れることによって缶胴2と缶底3の内面に敷かれるようにしても良い。また、薄葉紙4としては、蒸気を適度に通すグラシン紙が最適であるが、その他にワックスペーパーやアルミ箔などを用いても良い。また、缶1内に入れるパン生地5の分量は、例えば、そのパン生地5が発酵前の状態において缶1の容積の30~40%を占め、発酵後には約70%前後を占める程度に選定する。
【0016】次に、加熱殺菌工程Cは、缶1内で発酵させたパン生地5をその状態のまま約170℃前後の雰囲気温度に加熱されたオーブンに入れて焼成させると同時に、その際の高熱によってパン生地5と缶1内に付着した細菌を加熱殺菌する工程であって、缶1の容積の約70%前後を占める程度まで発酵したパン生地5を焼成させて焼き上げるパン6は、缶1内で膨らみを増して、焼き上がったときに缶1の缶口を殆ど閉塞した状態となる。そして、パン6が焼き上がる直前に、そのパン6が入った缶1を逆さにして、缶口を下向きにした状態で200℃以上の高温に加熱されているオーブン皿又はオーブン床の上に置き、その状態で完全に焼き上がったパン6をそのままオーブン内から取り出す。
【0022】また、缶1内で焼き上げたパン6は、その焼き上がりの風味が外部に逃げずに内部に封じ込まれ、水分の蒸発も最小限に抑えられるので、焼き上がり直後に缶口を缶蓋7で閉鎖すれば、焼き立ての美味しさや柔らかさを保ったまま缶1内に密封できる。しかも、高温の状態で密封できるので、蒸らし効果によって、しっとり感が付与される。更に、パン6を包む薄葉紙4として蒸気を適度に通すグラシン紙を用いれば、缶1内に密封したパン6の表面にベト付きが生ずることを防止できる。また、パン6の表面に接する面にシリコン加工が施されたグラシン紙等を用いれば、後でパン6の表面から綺麗に引き剥がすことができ、そのパン6の表面を傷つけるおそれがない。
缶に開口部を開けた状態で筒状にグランシ紙を入れます。
そこにパンの生地を入れて、缶ごと発酵させています。
小麦粉中のでんぷんは糖に分解して、イースト菌はその糖を栄養として、アルコールと炭酸ガスを発生させます。
この原理が、パンの生地が膨らむ発酵の過程です。
発酵した生地を缶のまま高温で焼き上げることによって、加熱殺菌することができるようです。
耐火性のグランシ紙で包まれているので、焼き上がりの風味を閉じ込め、水分の蒸発も抑えることができ、しっとり感を保つことができる、と書かれていました。
缶詰パンに関しては、いくつか特許がありましたが、缶の内部に耐火性のペーパーを利用し、高温で殺菌と焼成をいっきに行うおおまかな工程は同じでした。
まとめ
備蓄品は備えることと使えることが大切です。
いざという時を想定して、できることから始めていきたいと思います。
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