乳児の臍ヘルニアは治るの?【でべそ圧迫療法体験談】

臍帯と赤ちゃん

赤ちゃん(胎児)と母親は、へその緒を通してつながっているのはよく知られていますよね。

へその緒は臍帯(さいたい)と呼ばれ、下記のイラストのように、母体の中で胎盤と胎児をつないでいます。
胎児は胎盤を通して母体から酸素や栄養を受け取ります。

wikipediaより

赤ちゃんの命を支える、とても重要な役割をしています。

出産直後、生まれたばかりの赤ちゃんは、この臍帯がつながった状態です。

生まれた直後に、臍帯は数センチほど赤ちゃんのお腹に残して、母体から切り離します。
赤ちゃんのおなかに残った臍帯は、専用のクリップや紐などで出血しないように縛られます。

https://www.acute-care.jp/ja-jp/learning/medical-safety/cord-blood

残った臍帯部分、数日間はジュクジュクしています。
沐浴の後に消毒を毎日繰り返していると、臍帯(へその緒)は乾燥して、だいたい1週間~2週間程度で乾いた部分のへその緒がポロリと自然に取れます。

よく桐箱などに入れて、へその緒を記念に残したりします。私のへその緒も大切に保管されていました。

無事にへその緒が取れて、おへそがやっと見えます。

ところが、わが子の場合は、少し「おやっ」と思い始めました。

凹んだおへそではなく、いわゆる「でべそ」では?と感じるようになりました。
しかも日が経つごとに、そのおへそは大きくなっているようでした。

大きさは、一番大きな時でピンポン玉くらいでした。
オムツ部分に当たり、明らかにこれはおかしい…、そう感じて当時、写真を記録として撮り、残していました。

 いつもこの状態でした

生後1か月半頃の写真です。
泣いて、おなかに力を入れると、これよりも大きくなっていました。

あまりの大きさに、ネット上で「でべそ」「いつ治る?」のキーワードで検索した記憶があります。

このでべそは、その後、「臍(さい)ヘルニア」というものだと分かりました。

臍ヘルニアとは

わが子の臍ヘルニア、見た目はとても腫れているようでしたが、痛みはなく、触るとフワフワと軟らかいものでした。

臍ヘルニアでは、おへそがどのような状態になっているのか、下記のイラストを用いて説明します。

https://www.onishiskinclinic.com/blog/20191017.html より

生まれたばかり赤ちゃんは、おへその下にある筋肉(腹直筋)が完全に閉じられていない状態で、泣いたりして腹圧がかかることによって、腸管がおへその部分に飛び出してくることがあります。

この飛び出した腸管部分(もちろん皮膚で覆われています)は、指でおへその中に押して込んであげると、「グチュグチュ」と音をたてて、いったんおへその中に引っ込みます。
ですが、腹圧がかかると、再び、ポンと飛び出してきます。

赤ちゃんの臍ヘルニアは、ほとんどの場合が、おへそ内にある腹直筋が弱いために、その筋肉の隙間から腸管などが飛び出してくることがほとんどだと言われています。
上のイラストの状態ですね。

実際に、下記に引用のサイトでもそのことが書かれていました。

左右の腹直筋の間の一部脆弱(ぜいじゃく)な部位から腸管などが飛び出ることで“でべそ”となります。赤ちゃんが泣くとお腹に圧力が強くかかり、お腹の臓器(消化管や脂肪組織など)が脆弱部位から飛び出るようになります。そのため、臍ヘルニアは生後1か月頃から徐々に明らかになっていき、生後3か月頃まで増大する傾向にあります。しかし、この頃以降は、運動面の発達に伴い腹部の筋肉が発達し、腹部の脆弱部位が筋肉でカバーされます。そのため、およそ1歳までの間にほとんどのお子さんで臍ヘルニアは自然治癒します

     ーMedical Noteより引用

通常、臍ヘルニアは数か月で徐々に小さくなることが多いようです。
しかし、わが子のおへそは、いっこうに小さくならずに、3か月経ってもピンポン玉くらいの大きさでした。

このまま自然治癒に…とも考えましたが、「もしでべそのままだったら」と心配になり、治療をすることに決めました。

でべそ通院編

まずは小児科を受診。
その後、総合病院の小児外科を紹介されました。
小児外科では、このような「でべそ」の事例は多いようで、わが子のおへそを見た先生が一言、「ありゃー、これは大きいね!」と言われていたのが印象的でした。

触診をされ、腸管の飛び出し方を簡単に検査されました。
嵌頓(かんとん)と呼ばれる飛び出た腸が元に戻らなくなる状態に関しては注意が必要ですが、乳児の臍ヘルニアの場合は、ほとんどその心配はないようでした。

実際、わが子も嵌頓の心配はありませんでした。

では、具体的にどのような治療をおこなったのか。

「圧迫療法」と呼ばれる治療でした。

簡単に言うと、飛び出してこないように、おへそを綿球やスポンジで抑えて固定する方法です。
この治療法は、どちらかと言うと、きれいにおへそを凹ませてあげる補助をすることです。
自然治癒でも可能ですが、皮膚のたるみやこれ以上の飛び出しを防ぐために行うことが多い治療法でした。

おへそから飛び出した腸管を正しい位置に戻し、そこに綿球を詰めます。
このままでは綿球が押し戻されるので、上にガーゼを置き、その上から「3M社のデガダーム」という透明のテープを貼りました。

こちらのテープは病院から処方されましたが、粘着性もよく、赤ちゃんの肌にも負担がかかりにくものでした。

このままお風呂にも入れます。
清潔に保ちつつ、なるべく圧迫した状態を保つため、数日間はつけっぱなしでも大丈夫だと言われました。

ですが、この圧迫療法は、長期戦です。
早い子は、数週間できれいにおへそが凹む場合もあります。

わが子は、半年ほどかかりました。
その間、月1回通院をして、おへその状態を見てもらい、徐々におへそのでっぱりを小さくしていきました。

肌に優しいテープでしたが、夏の時期などは、皮膚が少し赤くなることも。
その場合は、治療を中断。皮膚の状態が回復した後に、また再開。

この繰り返しでした。

現在のでべそは?

少しだけおへそはでていますが、ずいぶんと治りました。ややでべそ気味と言ったところでしょうか。
普段は、おへそのでっぱりも気にならない状態です。

自然に治す方法もありましたが、少し大きさが気になる場合は、私のように受診する方法も良いと思います。

ニチバン社さんから、臍ヘルニア専用の治療キットもでているようです。

ニチバン株式会社(本社:東京都文京区、社長:堀田直人)は、飯塚病院(福岡県飯塚市、院長:増本陽秀)と共同開発した乳児の臍(さい)ヘルニア圧迫療法に使用する「へそ圧迫材パック」を6月5日から全国の病院、クリニックなどの医療機関向けに発売します。

生まれてすぐの乳児の腸が筋肉の隙間から飛び出し、おへそが膨隆した状態を臍(さい)ヘルニアと言います。おへその皮膚の緩み・飛び出しを防ぐため、おへそを綿球やスポンジで押さえテープで固定する「臍ヘルニア圧迫療法」が行われています。
本製品は、臍ヘルニア圧迫療法に使用する、皮膚への負担を減らした特殊形状の圧迫材と、皮膚刺激の少ないウレタンジェル粘着剤を使用した高透湿性フィルムドレッシングをセットにしたものです。圧迫力を高める補強テープを付属し、確実な圧迫を行うことができます。

ニチバン社ニュースリリースより

特許と臍ヘルニア

特許明細書でも臍ヘルニアの治療材に関するものがありました。

【公開番号】特開2017-64083(P2017-64083A)
【発明の名称】臍ヘルニア治療材固定用貼付材
【出願人】ニチバン株式会社

【背景技術】
【0002】
乳幼児等には臍ヘルニアが多く見られるが、これは、臍の緒が取れた後に腹部に形成される臍窩の底部で、臍帯と乳児の腹腔内とのつなぎ目の部分である臍輪に開存孔が形成されている場合に、その臍輪の開存孔から腹腔内の腸管が突出することにより起こる。
従来この臍ヘルニアの治療には、その臍輪の開存孔から突出したヘルニア部を指にて腹直筋の内側に押し込んだ後、綿球等を臍窩に押し込んでテープで固定する治療が行われていた。

従来の方法、これは私が試した方法です。
寝返り前ならば、自分(親)で綿球を詰めることもできますが、寝返りを始めたり、少し大きくなってくると、やはりおへそに何かをされることを嫌がり、泣いたり、動いたりして、確実に固定することが難しいこともありました。

またこちらの特許にも書かれていますが、長期にわたる治療の場合は、テープ自体の粘着力も必要な一方、肌への刺激が少ないものが理想的です。

ニチバン社の商品は、そのあたりが解決されている点が書かれています。

【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決した臍ヘルニア治療材固定用貼付材、すなわち、低刺激かつ優れた粘着力を示す粘着特性と、臍ヘルニア治療材の圧力を緩衝しつつ保持する保持力とを両立し、貼付中の違和感を低減した臍ヘルニア治療材固定用貼付材を提供することにある。

特許内では、粘着力や伸長強度などを検証、好ましい数値について述べられています。
支持体はウレタン樹脂を使用すること、粘着剤に関しては、最適な炭素数などが触れられています。

経験したことを切り口に特許を読んでいくと、理解力は各段に高くなりますね。
背景知識を調査する重要性を感じます。

終わりに

ホリエモンが最近手術をしたようで、大人がかかる臍ヘルニアでした。
嵌頓と呼ばれる痛みを伴う症状が起き、緊急手術をおこなったようです。

今回記事で取り上げた、乳児の臍ヘルニアは、9割程度は自然に治ると言われています。

大人の場合と乳児の場合、対処法も異なっていますので、ご注意ください。

今回は、私と同じように乳児の「でべそ」について疑問を持っている方、治療法ってそもそもどんなものなの?と思っている方の参考になれば嬉しいです。




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