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プリン容器の突起のひみつ
子供たちの大好きなプッチンプリン。
カップから出して、お皿の上に出して嬉しそうに食べています。
ある日「どうしてプリンをひっくり返すと出てくるの?」と聞かれました。
正確には、プリンの容器についている突起をプチっと倒すことで、プリンが容器から出てきますが、そのことが疑問だったようです。
さて、リアルな「6歳児にわかるように説明しよう」体験です。
①背景知識をつけて
②特許を調べてみる
この流れで、子供に分かるように説明するための情報を集めてみます。
①背景知識をつけるために、企業のサイトなどを活用して情報を検索します。
グリコ乳業さんのサイトに、ずばり商品開発ストーリーが紹介されていました。
物が生まれる背景には、必ず解決したい問題や課題があります。
容器開発の背景にあったのは、市販のプリンがレストランで食べるようなプリンと何が違うのか?でした。味については、開発と研究を重ねて、美味しい味に近づけることができます。
問題なのは、カラメルソースが容器の底に残ってしまうことでした。
見た目も、レストランではお皿の上に美味しそうに盛り付けされています。
このことを解決する手段として、今の形の容器が誕生したとされています。
ではサイトの情報をヒントにして、次に②特許で調べてみます。
手書きの図面が書かれた特許を見つけました。
【出願番号】特願昭51-106028
【発明の名称】容器収蔵プリン類の倒置方法並びに其の装置明細書1、発明の名称容器収蔵プリン類の倒置方法並びに其の装置
2.特許請求の範囲
1プリン容器の底板と収容物との間に所要時のみ外部より空気を流入せしめ、真空吸引作用を破壊せしめることを特徴とする容器収蔵プリン類の倒置方法。
aプラスチック製プリン容器の底板に開孔用突起を突設し、該突起の全周又は周囲の所要部に裂開用薄質部を任せしめ、該突起を横方向に押圧することにより開孔すると共に底板全部分的に引上げプリン底面との間に間隙全介在せしめる様にしたことを特徴とする容器収容プリン類の倒置装置。
【図面】
表現が独特ですが、内容は理解できます。
突起部分を折ると、できた開孔部分から空気が入ります。真空吸引状態だった内部に空気が入り、真空状態でなくなることで、プリンが重力に引っ張られ、設置された皿の上に落ちてきます。
真空状態吸引とは
プリンが容器に充填され(隙間なく詰められ)密封された状態です。
容器内(底部)は減圧状態にあるので、底面に通気穴を設け、開孔することで、減圧状態が解除されます。
容器の形状は筒状ではなく、写真のように開口部は少し広がっているので、逆さにした状態で容器から中身のプリンを円滑に取り出すことができます。
こちらの特許でも、ゲル状食品を容器から取り出しやすいようにするために、容器に工夫がされていました。
【公開番号】特開2011-178460(P2011-178460A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【発明の名称】ゲル化食品用のプラスチック容器
【出願人】
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
プラスチック製容器の形状を楕円形の開口部にして、開口部の全周にフランジをつけます。
この容器は開孔するのではなく、容器を軽く押すことで、密封状態を解除して隙間をつくり、容器から中身を取り出すような仕組みでした。
ドライアイスはどうして触ると危ないの?
アイスを買った時に入っていたドライアイスを見せているとき、「危ないから、触らないでね」と伝えると、子供から問いかけられた質問です。
もくもく煙がでているので、熱そうだなという感覚はあるようですが、アイスを冷やすものがなぜ熱いのか?熱かったら、アイスは溶けないの?どうして危ないの?と次々に質問されました。
ひとつずつ質問に答えるつもりで考えてみます。
まずはドライアイスの特徴。
ドライアイス(dry ice)の正体は二酸化炭素です。
二酸化炭素を固体にしたものがドライアイスです。
ドライアイスは常温条件下では、固体から液体にならずに直接気体に昇華します。
ドライアイスを触ることがなぜ危ないのかを理解できないのは、ドライアイスが氷と似ているからです。
氷とドライアイスは何が違うのか、その相違点から考えを展開してみます。
氷の正体は水です。
水が固体状態になったものが氷です。
水を0℃以下に冷やすと氷になります。
冷凍庫にいれておくとカチコチに固まって簡単に作れますよね。
ではドライアイスはどのようにできるのでしょうか?
作り方について、こちらのサイトの動画がわかりやすかったです。
温度や圧力によって物質がどの状態になるかを表した状態図を参照します。
参照:wikibooks
縦軸の圧力があらわす1.013×10⁵の数値は、標準大気圧を示しています。
標準大気圧の点で温度を見ていくと、水の場合は、水の融点は0℃、沸点は100℃になります。0℃で液体が固体になり、100℃で液体が気体になります。
二酸化炭素の場合は、同じように標準大気圧の点で温度を見ていくと、常温条件下では二酸化炭素は気体のままの状態です。
この二酸化炭素をボンベや貯槽に充填した状態では、液体と気体が共存する線上にあります。この状態で減圧していくと、二酸化炭素自身の温度も下がり、三重点を下回ると容器内の液体は粉末状の固体になります。粉末を固めた塊がドライアイスです。(動画を参照)
ではドライアイスの白い煙は何でしょうか?
ドライアイスの温度は-78.5℃以下なので、ドライアイスに触れた空気中の水蒸気は、水や氷の小さな粒になって、それが白い煙に見えます。
空気中で再び温まった水や氷の粒はまた水蒸気に戻るので、白い煙はすぐに消えます。
ドライアイスが溶けているのではなく、ドライアイスの周りの空気(目には見えない)が、冷却されることで水や液体の小さな粒子になって、目に見える白い煙の状態になっているのです。
触ると危ないのはなぜ?
人の体温は35度~37℃くらいです。一方ドライアイスは、−79℃と低い状態です。
極端な低温のものに長時間触れていると、血行不全などで体内の細胞が損傷する凍傷の状態になってしまうのです。
ドライアイスに長い時間触れていると、痛みを感じます。
ドライアイスについては理解できますが、体のしくみなどにも触れる必要があり、うまく伝えるのは難しかったです。
結局、以下のように伝えました。
(子供への伝え方)ドライアイスは氷のように水の凍ったものではなく、二酸化炭素という目にはみえない気体をとても冷たい温度で固めたもの。冷たい温度のものをずっと触っていると、皮膚の中を流れる血液がうまく流れなくなって、その部分だけやけどのような状態になる。
参考までに「ドライアイス」で特許もいくつか確認しました。
【公開番号】特開2016-30703(P2016-30703A)
【公開日】平成28年3月7日(2016.3.7)
【発明の名称】ドライアイスの貯蔵方法
【出願人】
【氏名又は名称】日本液炭株式会社【0004】
ドライアイスブロックを貯蔵する方法としては、例えば、発泡樹脂成形体からなる保冷コンテナが庫内に配置された電気冷凍機式の冷凍庫を使用し、保冷コンテナにドライアイスを収容して冷凍庫の庫内温度を-70~-40℃に保持することにより、ドライアイスの昇華ロスを低減する方法(特許文献1)、あるいは、電気冷凍機式の冷凍庫を利用したドライアイス保管庫において、上蓋を回動自在に構成し、昇華ガスを適宜放出することにより、冷凍庫の内壁への再結晶物の付着を抑制し、冷凍庫の冷却能力を保持する方法(特許文献2)が開示されている。【0009】
更に解析を進めた結果、ドライアイス表面においては、昇華ガスによって形成される略亀甲型の亀裂が時間の経過で変化し、斯かる表面状態の変化は、小片同士の付着部分においても同様に発生していることが確認された。すなわち、ドライアイスの表面では、昇華と固化とが繰り返されており、これにより、例えば切断面などの比較的平滑なドライアイスの表面同士を接触させた場合には、表面同士が再度一体化するとの知見が得られた。そして、貯蔵庫において、ドライアイスの小片同士の付着が発生する場所をドライアイスブロックごとに確認を進めた結果、昇華ガスが滞留し易い貯蔵庫の下部で多く発生していることに着目し、ドライアイスブロックを貯蔵するに当たり、貯蔵庫内での昇華ガスの流下を低減させるならば、意外にも、小片同士の付着の発生が著しく低減することを見出し、本発明を完成した。
冷却材としてあらゆる分野で使われているドライアイスですが、温度管理をおこなった状態で貯蔵することが必要です。
ドライアイスの表面で昇華と固化が起こるので、昇華ガスが発生して、その昇華ガスが積み重ねた場所によって貯まりやすくなってしまう症状が起こります。このことで、ドライアイス同士がくっついてしまうため、この特許ではドライアイスブロックの境目に、シートを介在させる方法で貯蔵をしていました。
まとめ
簡単に説明するということは、曖昧な理解では言い換えることができないことがよくわかります。
使う言葉を単純化すればするほど、深く理解した上で、的確な表現を選択していく必要がでてきます。
私のかみ砕いた答えを聞いた子供の反応は、いちおう「わかった」と言ってくれましたが…
本当に知りたかった答えになっているかは不明です。
学習する際には、常に自問自答して、「●●になるのはどうして?」と考えを繋ぎながら進めていきます。
プリンが落ちやすいように、容器の形は出てくる部分を広くしているし、容器自体もプラスチックといって、ツルツルしたものが使われている。