パスカルの原理を元に考えられた水害避難室とは

小さな力を大きな力に変える

美容室や歯医者で、電動椅子に座った経験はありますか?
ペダルを踏んだだけで、自分の体ごと簡単に椅子が上下しますよね。

あの椅子には、「パスカルの原理」を応用した電動油圧方式の技術が使われています。

少し踏み込む小さな足の力を使って、人が乗った椅子まるまる容易に動かすことができる技術です。

電動油圧方式は、工業の分野や手術台を動かす医療の分野など、さまざまな分野で活用されています。

パスカルの原理とは

まず、パスカルの原理を説明する前に、圧力について考えてみます。

圧力

圧力とは、単位面積(1m²)あたりに働く力のことです。

img

単位はPa(パスカル)で表します。1Paは、1m²あたりに1N(ニュートン)の力が働いていることになります。

パスカルの原理

今野製作所

上の図を使ってパスカルの原理について説明します。

まず、ピストンAは面積1cm²、ピストンBは面積4cm²なので、Bの面積はAの面積は4倍です。
それぞれのピストンの上におもりを載せていきます。

Aには10Kgのおもりを載せた時、大きいシリンダーBには40Kgのおもりを載せると、図のようにつり合います。

このように、密閉した液体や気体の一部に圧力を加える(おもりを載せることで外から力を加える)と、その力は容器内のすべての点で同じ大きさの力が伝えられることを、パスカルの原理と言います。

図のように、ピストンAを40mm押し下げる力を加えると、ピストンA下面に圧力Pが発生します。パスカルの原理より、連結したシリンダー内の液体を介して、ピストンBの下面に同じ強さの圧力Pが伝わります。よって、ピストンBは10mmだけ上昇します。

つまり、シリンダーAに載せたおもり10Kgは、シリンダーBに載せた4倍にもなる40kgのおもりを支えることができるのです。小面積に加わる小さい力は、大面積にかかる大きい力と釣り合っています。

 

電動油圧方式はこの原理を応用しています。
小さな力で、らくらくと椅子を持ち上げているのです。

 

引用

 

こちらの動画は、パスカルの原理を理解できる実験を見ることができ、参考になりました。
5分程度の動画です。

 

パスカルの原理と特許明細書

「パスカルの原理」で明細書を検索してみました。
自動車や機械で活用されている原理がほとんどでした。
様々な特許の中で、「水害避難」のキーワードで見つけた特許があったので取り上げてみたいと思います。

異常気象で水害は割と身近な被害になっているので気になります。

【特許番号】特許第5209140号(P5209140)
【登録日】平成25年3月1日(2013.3.1)
【発行日】平成25年6月12日(2013.6.12)
【発明の名称】水害避難室
【特許権者】
【氏名又は名称】日本セイリングハーバー株式会社

企業名で調べると、津波対策用の地下シェルターを建築している会社のようです。
このシェルターは、ドアのないシェルターで、あえて水を流しこむ仕組みになっているようです。

この仕組みに、パスカルの原理が生かされていました。

 

【0005】
地下に設置される避難室は特許文献2をはじめ多数存在するが、水が地下の避難空間に入って避難室全体を浸してしまったら使用不可能になる場合が多く、これを防止するために出入口に鉄鋼製ハッチなどを取り付けるといざ避難という際に重いハッチを開閉しなければならないという負荷が生じる。

【0050】
津波が来そうだという情報を受けたら、避難者は必要最低限のものを持って庭に出る。入口扉40を開けて、進入口4から水害避難室2内に入り、進入階段6を下りて行く。エントランス12に入り、開口部14をくぐって避難空間20の床部16に入る。エントランス12と床部16とはほぼ同一の高さであるため、緊急時に足の不自由な人でもつまづきにくく移動しやすい。進入階段6は車椅子用にスロープで構成されていてもよく、エントランス12と床部16とはほぼ同一の高さであるため、車椅子でも容易に移動できる。

 

【0051】
避難空間20の床部16で待機している間、津波が襲ってきたとする。水流が自宅の庭に来て柵42を破壊し、水が進入口4から水害避難室2内へ流入する。流入した水は進入階段6を勢いよく下っていく。この時点で踊り場8の側面扉10は閉まっているため、側面扉10から避難空間20へは水は入らない。進入階段6を下った水はエントランス12に至り、エントランス12と床部16との隙間に入って開口部14の下部から床下空間18に浸入する。水が少しでも床下空間18に浸入するとフロート30が浮上するので、開口部14から流入する水は床部16上に入らなくなる。
【0052】
床下空間18に次々に入った水により、フロート30が浮き上がってきて床部16が上昇する。フロート30が開口部14の上端部の高さまで浮き上がると、いくら水が進入口4から水害避難室2内に流入しても避難空間20には流入せず、フロート30も開口部14の上端部以上には浮き上がらない。従って、床部16もそれ以上は上昇しない。図4はこの位置を示したものである。これは、パスカルの原理によるものである。よって、避難空間20が空気空間として保たれ、津波の水が引くまでのある程度の時間(例えば数時間)は人が待機することができる。避難空間20には床部16が前述した位置まで上昇して内部に密閉された空気空間を有するため浮力が働くが、避難空間20の内壁32は外壁28にアンカーボルトにより固定されているため、浮上しない。

 

フロートは浮体式の構造物のことです。水が侵入してきても、このフロートのおかげで水が避難室に入ることなく、床部が上昇していくようです。

浸水した後の避難所の図は、パスカルの原理で使った図(左右逆)の構造に似ていますね。

浸水してきた水と床下空間に入った水は、パスカルの原理を利用して、圧力がつり合うような構造になっています。
パスカルの原理を学習した後だと、この避難所の仕組みがよく理解できました。

ちなみに避難者はカメラ38から地上の水が引いたかどうかを確認でき、最終的には梯子24を上ってハッチ26を開け、地上に出ることになります。
GPS搭載のスマホや非常食は常備して、ソーラーパネルも設置されているので発電可能で、換気等も対応した造りになっていました。

地震の多い日本ならではの特許です。

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おまけ

パスカルの原理を検索していると、子供向けのサイトや実験がたくさん紹介されていました。

実験好きのお子さんがいれば、一緒に実験をしながら勉強するのにも良さそうです。

子供の科学への興味につがるかもしれませんし、子供の疑問に分かりやすく答えることで、自分の理解力を試すことができます。

下記のサイトは、親子で科学を楽しむ機会がつくれそうな実験が紹介されていました。


子供の科学 2019年 10月号 [雑誌]

 




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